胎動1
ここ大阪には、SPAS隊員は約2000人程しかいないが、ここの隊員のLEVELは非常に高い。なぜなら、SPAS大阪支部の支部長は「死神」と異名をとる半田という40過ぎのオッサンであるが、あなどるなかれ!!
彼こそ世界に名を轟かすサイキック部隊アルファ1の隊長にして、世界最強のテレパシストであり、軍事のスペシャリストである。そして、彼は若手SPAS隊員の養成にも積極的であるので、大阪は大阪、東京、北海道、九州、四国の5ヶ所でもトップの力を誇っている。「というのは、話の本編からは外れる話だが、憶えていて損は無いだろう。本編スタート。」
「隊長、こちら、楓。ターゲット発見。」ターゲット:原生猿、体長約3m推定体重180kg「了解。すぐに向かう。チームソドム、楓の周辺にターゲットがいる模様、なおサイキックは能力の使用を許可する。」俺は、こういう時に周りの隊員たちの特別性を再認識させられる。自分はサイキックやないから・・・、なんて感傷的な気分になってる場合やなかった。今回の任務は珍しく報酬がいいのだ、いつもならこの程度の任務なら1千万ぐらいだが、今回はなんと2億なのだ。だから、みんなのモチベーションも普段の何倍にもに上がっているのである。
「こら、楓、ボケッとするな!!」後ろから声がした。ユーリだ。
「ユーリ、怒んなって!ってかこのターゲットは”ユーリの能力”で一発やろ??」ユーリがニヤッとした。「礼子、あのデカブツの気を引いてくれ。」ユーリが、言うや否や、
「はいはい。森の精たちよ、私に力を。あのデカイ猿の動きを封じて!!」原生猿の足元の木の根が意思を持っているかのように、足に絡みついた。だが、絡みついた根のことなどまるで気にせず、引きちぎってゆく。完全にちぎったかに見えた時、ほんの一瞬だが、動きがにぶくなった。
「っは!!!」ユーリの目が赤くなり、原生猿の体を赤っぽい光がつつんだ。原生猿の動きがとまり、徐々に空中浮遊し始め、原生猿を入れる捕獲ポッドの方向に移動し始める。
「念のためだ、特別性の麻酔弾を3発ぐらいぶち込んどけ!!」と同時に、馬鹿でかい銃声が響いた。
「龍兄、もう撃ったよ。」今のは、ミアだ。俺より3つ上の隊長の妹で、天才的スナイパーである。
「今回の任務はユーリのおかげで、楽やったな。」俺が、そう言った時、捕獲ポッドに原生猿が入る直前だった。誰もが入る、終わった〜と思った時に、
「ぐわあああああああ。」ユーリが絶叫をあげながら倒れた。
「ユーリ!!」俺はユーリに駆け寄った、外傷はなく、体温、脈ともに正常だった。
「隊長、ユーリは無事や。猿はどうなった?」
「楓、お前はそこで待機。こっちは俺が何とかする。」何とかする?何かあったんやんけ!
「部隊の危機は俺の危機。ユーリを連れて今すぐ向かいます。」
「あのバカは!!」別に問題はないな、このデカイ猿を俺が即効で倒せばいい。
捕獲ポッドに入る直前で、ユーリが、原生猿の何らかの能力によってやられた事がチームに心理的ダメージを与えているな。ダメージを受けてないのは、俺と楓ぐらいなもんか、いっちょソドムの連中に何で俺が隊長をしているのか見してやろうかね。
デカイ猿が逃げようとしてやがる、だが、ミアのおかげで動きが鈍っているな。これなら余裕で追える。
「おい、ミア、足を狙え!」銃声が聞こえるより速くデカ猿が、体勢を崩した。ここだ。
「っは!」一足で5m程あった間合いをつめ、気を込めた必殺の右{俗に言うハッケイ}を繰り出した。体勢を崩していたため、デカ猿はモロに腹にくらったようで、一撃で倒れた。俺がユーリを背負ってきたときは、もう勝負はついていたのだ。その右の威力は猿の腹を見れば一目で分かるが、何と陥没しているのだ。補足しておくが、この猿の皮膚は、軽火器を止められるのだ。
「その猿を運ぶから、お前ら手伝え!」
ソドム一同「了解。」
今回の事で俺は、隊長を尊敬しはじめた。だが、この簡単な任務がSPAS史上の悲劇の幕開けであるとは、まだ誰も知らないのだった。
用語解説
SPAS・・・21世紀前半、突如として自衛隊の代わりとして発足した組織である。非常に特殊な組織であり、公にはすごく世の中生きやすくなる免許ぐらいに思われているようだ。確かに、この免許があれば一生遊んで暮らせるだろう。「1年の試練」と呼ばれる脅威的な入隊試験が存在し、その存在がSPASへの安易な入隊を止める働きをしている。
1年の試練・・・候補生たちには、SPASのしたっぱ隊員が、入隊試験の試験官となり、候補生たちを殺していくという試練が与えられる。候補生たちは追手をかいくぐり、1年間逃げればはれて、SPAS隊員になれるのだ。しかし、挑戦している1年の間に死んでしまった場合には、遺族にわずかな慰謝料が払われるだけである。
SPASの隊員・・・武器の全般の使用が認められ、過って人を殺してしまった場合にも、ほとんど無罪になる。お金もかなりいっぱいもらえる。ちなみに、隊員数は、3万人ほどで、その内の1000人程はサイキックと呼ばれる異能力者である。
サイキック・・・異能力を持った人々の事。