胎動2
「いやぁ〜、危なかったね。みんな。」隊長はにこやかに笑いながら言った。
「ユーリのサイコキネシスが破られちゃうんだもんなぁ。困るよ。ほんとっ。」その時、ミアが、
「ユーリは・・・?」と心配そうな顔で聞いた。
「まだ眠ってるけど、大丈夫だ。翔がついてるし。」俺は心配やった。だから、思わず聞いてもうた。
「ユーリは大阪でトップクラスのサイコキネシストなんやで?
それやのに、あのただの昔の生き物のクローンに負けたんやで!」
これはみんなが思ってる事やった。
隊長は深刻な顔で、
「悪いな、俺は何も知らないんだ。本当にすまない。」
みんなは一様に暗い顔で、隊長室を出て行った。そこに一人残された隊長は、
「さぁ、半田さんに話を聞くためにも、さっさと報告書を書かないといけませんね。」と一人言をつぶやいた。
その時、左の壁からミアが現れた。
「龍兄、あの麻酔弾、効果薄めたの??」
「ん?いやそんなはずはないが?」
「だって、3発当てたの、見たでしょ?あの弾1発で象30頭分を楽に眠らせる効果があるんだよ。」
「わかってるさ、だから、今急いで報告書仕上げて、半田さんの所に行こうと思ってるんだ。
だから、早く出て行ってくれ。
後な、物質透過を使うな!俺は知ってるからいいが知らない人が見たら、ビビりまくるから。」
ミアがプイっとふくれて、
「使わないって。じゃあ。」と言ってドアから出て行った。
そして、隊長は報告書を睨んで、
「さぁ書こうかなと。」と呟いた。
それと同じ頃、隊長の部屋から出て行った俺は、仮眠室で寝ようと思って4階の廊下を歩いてた。
「げっ!」その時、前から俺的に、苦手な人BEST3には入ると思う人が来よった。
「何が”げっ!”やねん!めっちゃ嫌そうな顔しよって!!」
「え?そんな事ないですよ。半田さん!」出来る限りの愛想笑いで言った。そして、半田さんが、
「なら当然、今から俺と組み手つきあうよな?」にやっとして言った。しまった・・・と思ったが、もう遅かった。
思いっきり作り笑い全開で、
「ええ、それはもちろん!」と心の中に涙を浮かべ、自分の考えなさと不運を恨んだ。
そして、4階から地下2階にある道場に移動した。
「それじゃあ、やろうかね?本気でやるけど、死なんようにな。」
40過ぎのオッサンには、とても見えないオーラが包んでいる。
あ〜だから嫌なんよ。と思いつつも、
「よろしく、ご指南お願いします。」と俺も気合を入れた。
「30本乱取りはじめ!!」の声と共に、は?と思ったが、
声に出す前に、半田さんが一足で間合を無くして、
右の正拳を打ち込んできた。バックステップでよけつつ、左ハイ、
「しゃっ!」当たったと思ったのに、それどころか俺の体が宙に浮いてた、
何でや?と思いつつも、落ちる前に体勢を立て直して、考えをまとめた。
違う確かに、当たったハズや。半田さんは合気の達人や。
だから、俺の蹴りの力を利用して飛ばす事も出来るはずや。
その何かを見極めたる!と考えてると、左のローが飛んできた、
カットするために右足を上げたら、ローの軌道が急にハイに跳ね上がった。
やばっ!右手上がれ!頼む、間に合え!と念じながらあげたところ、ギリギリ間に合った。
けど、右手が一発の蹴りでオシャカにされるなんて、さすがやな。
「よう反応した、中々やな。ならこれはどうや?」
と左足を踏み込みつつ右を繰り出し、当然右を使えない俺が左で弾くと、
その右を下げないまま右のハイが飛んできた。
は〜?こんなんどうよけんねん?と思いながら、その場で片手バック転してみた。
つまさきが半田さんの頬をかすめた。よけれた、奇跡や!!
「やっぱり、ええなぁ!楓!」とか意味分からん事ほざいたと思ったら、
「俺に血を流させるまでになったんか、よっしゃ、本気でいくで!」とか言いよって、
「え、ちょっと待てって。」慌てつつ、後ろに逃げていくと、
「甘い!はっ!」タダの左のジャブのはずやのに、風圧だけで頬が・・・。
は〜?反則や!なんて思ってる暇はなく、
右の蹴りが続けざまに飛んできた。かなり大振りやったから、楽によけれた、
ここで反撃に転じないとマジで死ぬなと思い、死に物狂いの右正拳を放った。
今までの人生の中で最高の拳だった。
だが、次の瞬間、俺に半田さんが見える事はなかった。
起きたら目の前に、綾香の顔が心配そうにのぞきこんでいた。
「お、綾香やん!どうしたん?」と体を起こすと、
「うっ!」めっちゃ痛い、やばい、体じゅう痛い。
「大丈夫?楓。」
俺は顔を苦痛にゆがませながら、綾香を無視して、
「そういや、俺、半田さんと乱取りしてて〜
めっちゃイイ右が当たって?当たってないっけ?」と言うと、
「当たったで、この手見いや。」
と半田さんが綾香の後ろから現れ、上げた左手を見ると、
肘のちょっと上の部分が拳大に片がくっきり付いていて、
その部分と周りがあおというかくろずんでいた。
「マジですか??」ありありと喜びが分かる顔で聞いた。
「そやから、本気で投げて極めて壊そうとしたんやんか!周りに見物人がおって良かったわ。
危うく将来有望な隊員を一人殺してまう所やった。」
大真面目にそう言ったのを聞いた俺は、
「だから、こんなボロボロなんすね、俺。」
と言いつつ内心、このオッサンぜってぇ殺すと思った。
「そのいきで頑張れよ。」
「全治2ヶ月。」ブスっとして言った。
綾香はソドムの医療班の一人だ。
「マジかよっ!翔呼べよ、翔。」
すると、隣のカーテンが開けて、
「呼んだ?」
と翔が顔を出した。どうやら隣はユーリの寝てるベッドだったらしい。
「頼むよ、翔、2ヶ月も寝てらんないって。」と言うと、
「まぁ待って、半田さんからね。半田さん、左手を僕に。」
半田さんの左手を取ると、目をつむり、集中し始めた。
翔の能力は、人体の治癒力に直接作用し、理屈は分かってないらしいけど、
傷や骨折や内部にできた腫瘍などを驚異的に速く治す力で、その力には毎度世話になりっぱなしで、
翔に頭が上がらないSPASの隊員はかなり多い。
「もう大丈夫ですよ、今日はおとなしくしててください。左手以外なら問題ありませんが。」
「いつもながらすまんな。お前らの隊長が俺を探してるらしいから、そろそろ部屋に戻るわ。」
左手を触りながら、医務室から出て行った。
「じゃあ、楓の番。綾香、けがの状況を説明して。」綾香はめっちゃ不機嫌そうに、
「嫌。」
「楓、何か綾香にした?」
ん?という顔をしながら、
「え、してないと思うけど。」
と言うとさらに、不機嫌になり、無造作に俺の顔に思いっきりビンタし、
{バシ!!}とめっちゃ痛そうな音がした。
そして、綾香は、
「バカ!!」
と言って医務室から走って出て行った。
「めっちゃ痛いし、こっちはけが人やぞ!意味わからんわぁ・・・。」
「あ〜ぁ、ほんと女心が分かってない、楓は。ったく、俺は知らないかんね。目閉じろ。」
と言いながら、俺の胸に手を当てた。
すると、体の中の何かが活性化し始めた。痛みが消えていく、
それと同時に、力が込められなかったのに、どんどん込められるようになった。
「もういいよ。目開けて。あ〜疲れた、今日はこれで終わり。もう無理。」
「サンキューな。じゃ!」
と言って、医務室から出て行こうとした時に、
「半田さんに言ったの聞いてたと思うけど、おとなしくな。」
俺は振りかえってうなずき、出て行った。
そして、疲れてだるかった俺は、仮眠室に行った。
支部長室にて
「半田さん、今回の事件報告にまいりました。」という声と、コンコンというノックが聞こえ、
「入りぃや。」という半田さんの声が響いた。
「これが今回の事件の報告書です。」
林田隊長が持っていた書類を手渡し、
半田さんが書類を読むのを待った。
すぐに読み終わり、
「これはどうやら、動き出したらしいな。」
と意味深な言を言うと、
「半田さん!何か知ってるんですか?知ってるなら教えていただきたい。」
「そのつもりや、ソドムはSPAS大阪支部でもTOP3に入る部隊やからな。」
と言って、話し始めた。
半田さんの話によると、SPASにも世間的にもあまり知られていないが、
敵対組織にTSPという組織があり、
しかし、今までは
SPASがあまりにも大きいので、
全く動きが無かったらしいが、ついに動き出したらしい。
何故このタイミングなのかを聞いた所、さぁと言われてしまったが、
とりあえずの目標ができた。
今回の任務を依頼してきた奈良国立古代生物研究所を調査する事だ。
あの猿の事も解析して、ユーリを助けないと。
ソドムの主戦力のユーリは外傷などは全くなかったのだが、まだ起きていないのである。
奈良山中の研究所にて
「陣さん、ついにやりました。」と自信げなそれでいて人に不快感を与えない声で言った。
「とうとうサイキックの能力を封じ込める実験に成功したんです。
なんと相手はあのユーリ・カインツァーですよ。ただ発動するまでに少々時間が・・・。」
「どれぐらいだ?」冷たい視線が白衣の男を貫いた。
「えっとですね〜約20分です。」
「長い。もっと調整しろ!!10分以内にしろ!!」
「はいっ!分かりました。」
無茶言いやがって。でも、サイキック達を殲滅するためにはしかたない。
「主任、!」
後ろから白衣の女性が近づいてきた。
「何だ?」
「ついに、遺伝子情報の中でサイキックを抑え込む情報の解析が完全に終了しました。
これを分離して、あいつに投入すれば完全にサイキックをシャットダウンできるはずです。」
すると、陣さんと呼ばれた男が白衣の女性を抱き寄せて、
「よくやった。レン。これでSPASをサイキックを潰せる。ハッハッハッハッハッハ・・・。」
その大きな研究所にただ高らかな邪悪な哄笑が響いた。。。