2ヶ月
研修生によって出来たグループ、『ゲイツ』に入り2ヶ月が過ぎた。
どうやら毎日追いかけられる訳でもなく、見つかることは非常に希のようだ。
仲間は研修生と言ってもほとんどが僕よりも年下の子ばかりなので、一人で生きていくこと自体が困難だろう。
丹波さんがグループを作ったのはどうやら生活も出来ない親に見捨てられた子達が哀れでならなかったのだろう。
この2ヶ月はとても楽しかった。始めの方はみんなに恐がられていた。みんな試験生におびえて暮らしているのだから仕方ないことだ。
徐々にみんなが僕に慣れてくれて、話しかけてくるようになってからはすぐに仲良く慣れた。みんな明るい子達で、普段はふざけあっているが、夜になると泣き声が聞こえてくる。やっぱり彼等は何処までも普通の子達で、親がいない事の悲しみもあるのだ。
いろんな思い出が出来た。
みんなで銭湯に行ったときはものすごかった。なにしろ十数人の子供が一斉に風呂に飛び込むのだから、一気に風呂のお湯が半減した。
当然後でしかられたがあんなに大勢と同じ時を過ごすのは学校以来でホントに久しぶりだったのでとても楽しかった。
どうやらこの廃ビルの近くにピアノ教室があるらしく、僕がゲイツに入った日から、ピアノの音を聞かなかった日はない。
毎日弾き手が違うので、聞き飽きることが無かった。上手な人が弾くときなど、みんなして聞き入ってしまうときだってあった。
一ヶ月たった頃に、一度家に帰ってみた。久しぶりに育った家のドアを開けると色々なものが散乱していた。
インスタントの食べ物やお菓子のカスが床の至る所に落ちていた。その中でユーヤが一人で壁の隅の方で座っていた。
「ユーヤ。」
僕の声にビックリして反応するその姿があまりに弱々しいものだったため、僕はいかに辛いことを彼に強要していたかを知り、自分を恥じた。
「兄ちゃん!!」
ユーヤは僕の胸に飛び込んで、大声で泣き始める。
「寂しかったよ!兄ちゃん!!」
「ああ。ゴメンな?兄ちゃんいっぱい待たせちゃったな。ゴメンな?」
「・・・・・うん・・・・・」
「もう大丈夫だよ。兄ちゃんと一緒に仲間の所に行こう。」
僕は弟をゲイツに連れて行く気なのだ。丹波さんによると、家族を人質にとることもあるらしい。とことん卑怯な奴も居たもんだ。
兎に角僕は弟を連れて、仲間の元に返っていったのだ。
年齢が近いからか、ユーヤは他の子供とすぐに仲良くなった。毎日廃ビルの中で暴れ回っているから五月蠅いことこの上ない。
そういえば、ユーヤと作ったミルクセーキはみんなに好評だったな。でもあれはもう作らないようにしようと思う。
だって後に残った大量の白身と卵の殻は後処理が面倒だったからね。
とにかく短い2ヶ月だったよ。ホントにあっという間だった。試験が終わるまでこんな日々が続いたらいいな、ホントに。