祝賀
タケオはゲイツの中でも僕と丹波さんの次に年長の男の子だ。と言ってもユーヤより誕生日が数日早いだけだけど。彼はおとなしい子で普段はあまり喋らない子だ。必要な事だけ話して後は何も言わない様な子だ。そのせいでゲイツの中でも唯一彼だけが孤立していた。ユーヤも何度か話しかけているのが見かけられたが、反応はそっけなかった。
タケオは常に一挺のハンドガンを持ち歩いていた。丹波さんによると、子供が銃を持つのは危ないと思いタケオから取り上げようとしたところ、いつもは寡黙なタケオが突然暴れ出し、それ以来取り上げようとするのを止めたらしい。
とにかく今日はそのタケオの試験最終日で、今はみんなが彼のために計画したパーティの最中だ。みんなからタケオにプレゼントが送られた。しかしタケオは少し眉をひそめながら、
「・・・・どうも。」
と実に他人行儀な態度だ。見かねた丹波さんが軽く怒るがタケオは「ごめんなさい」と一言言うだけで終わった。そのやりとりでだいぶテンションが下がってしまったが、女子群がフォローする形で何とか乗り切る。
その後もみんなで楽しんだ。元々小さい子にとってはタケオのパーティと言うよりみんなのパーティという印象なのでジュースを飲んだりお菓子を食べたりと実に幸福そうだ。
みんなから少し離れたところに小さい机と椅子があり、そこに丹波さんが座っていた。僕はみんなの輪から自分の椅子と共に抜け出し、
丹波さんの隣に座る。そこで子供達の姿を無言で眺めながら、丹波さんに尋ねる。
「・・・・どうするんですか?」
「なにがだ?」
丹波さんは僕が質問するのをあらかじめ理解しているかのように、視線を全く動かずに聞き返してきた。
「丹波さんももうすぐ試験が終わるんでしょう?ゲイツはすでにかなりの人数です。おそらく幼い受験生はほとんどここにいるでしょう。それだけの子供を集めるのに一ヶ月や二ヶ月で出来るもんじゃないはずです。」
「・・・ああ。お前の言う通りだ。俺にはもう時間がない。」
「だったらどうするんです?まさかSPASに入ってからも手伝えるとでも思っているのですか?」
「だからお前を仲間に入れた。それくらい入る時点で分かっていたんだろう?」
丹波さんの言う通り僕は始めから分かっていた。丹波さんに時間がないことも、僕が後のリーダーになるであろうことも。それでも僕は仲間になった。哀れな子供達と自分たち兄弟の境遇が似ていて、とても他人とは思えなかったからだ。
「最初はタケオをリーダーにしようと思って仲間にしたんだが、後で俺よりも早く試験が終わることを知ってな。少し焦ってた。」
彼はそういうと少し苦笑いした。
「まあ、お前なら大丈夫だろ?俺はやってくれると信じてるからな。」
「お世辞言ったって何も出ませんよ?」
「ハハッ、違いないな。」
「それにしても敵、来ないんですね。僕がチームに入る前にあったきりじゃないですか。どういう事なんです?」
「安心しろ。みんなそんなモンだ。いかに逃げ切るかがこの試験の醍醐味だ。上手い奴は一度も会わない事だってあるからな。」
「そんなモンなんですか。」
「そんなもんだ。」
そういって丹波さんは椅子から立ち上がり、そろそろ収集がつかなくなってきそうなみんなの輪の中でパーティの司会を勤め始める。
・・・・すごい人だな・・・・
僕は思わず声に出さずに口ずさんだ。
あり得ないのだ。これだけの人数が暮らしていることにSPASが気づかないなんて。今までに何度も試験生が来たはずだ。おそらく、彼は今までそれらを退け続けたのだろう。きっと何人も殺したはずだ。それでもなおゲイツを守り続けるなんて僕には出来ない。
そのプレッシャーを背負い、誰にも見せない丹波さんは一段上の段でマイク代わりに木の棒を握って『森のくまさん』を熱唱している。