短編「魔犬」A
ルームナンバー三番。
敵はココに居る。
何をためらう必要がある。
勝ったら、公開自慰をさせてやる。
彼の胸中は嵐が吹き荒れていた。
相手はE−06”アイドル”こと、鳥羽茶葵、自称”てばちゃん”。
能力は良く知っている。
勝てないことは無い。
E−00のような化け物でもない限り勝てるだろう。
勝算はある。
「(ちょっとでも、こいつは良い奴と思った自分が腹立たしい。
生まれてきたことを後悔させてやるよ。)」
殺気で周りは凍り付いていた。
どこから、噂がもれたのか知らないが見物人が多く居た。
彼は扉をくぐった。
向こう側では既に待機していた。
「遅いよ正ちゃん♪」
「俺は武蔵なんだよ。」
「小次郎は美形だったんだって。」
「誰も聞いてねえよ。
とっとと始めるぞ。
負けてからあやまんなよ。」
「せっかちだなぁ。
そんなに欲しいの。
私のカ・ラ・ダ♪」
「ぶっ殺す。」
言い終わる前に彼は動いていた。
手に持つ武器は、叢雲社製複合兵器”ファントム”。
剣と言うには禍々しく、銃というには優美で不思議な紋様が浮かんでいる。
初弾を打ち出した。
左に踏み込みながら、右に。
そして、大剣を右から左に振り抜いた。
茶葵は軽く後退して服一枚で凶刃をかわす。
彼の体が泳いだ所に踏み込んでナイフを突き出す。
彼はその予想どうりの動きに合わせて、普段は持たないハンドガンで照準をつけた。
タタタン
片手でトリプルバーストを放った。
タン
茶葵のナイフはスペズナスだった。
どちらも訓練用のペイントボールだったから助かった。
茶葵は両腿を打ち抜かれていた。
彼は心臓の脇を打ち抜かれていた。
「実弾だったら死んでたぞ正ちゃん。」
「お前もな。」
「実弾にするか♪」
「死んでもしらねえぞ。」
「私は死なないって。」
「生き残ってから言いやがれ。」
「大丈夫♪」
茶葵はサブマシンガンを取り出した。
それは、とても奇妙な形だった。
「ブッシュマンIDMって言うんだ。」
「俺はダブルチェイパーを使う。
ハンドガンは使わん。」
”ファントム”に装填できる弾丸の中でも、最高威力のものを挙げた。
”ダブルチェイパー”には二種類の液体火薬が封入されていて、着弾時に混ざり合い爆発するように作ってある。
生身の人間相手に使用するような代物ではない。
ましてや模擬戦などには・・・
しかし彼女は認めた。
「偉く強いのを使うね。
そんなに殺したいの?」
「これぐらいじゃ死なねんだろ。」
「自慢の顔が残りますように・・・」
「塵一つ残さねえ!!」
ドン
腹に響き渡る爆音。
舞い上がるコンクリートの塵。
茶葵はとっさに目を守った。
そして、静かに言った。
「反逆形成起動。」
彼女の能力”反逆形成”は珍しいサイキック能力だ。
相手の最も嫌がる戦い方をするのだ。
的確に、寸分の狂いも無く。
茶葵には人の心が読める。
その人の嫌な所に関する情報のみだが。
そこに目をつけられSPASの幹部クラス、N.N鍛え上げられた能力なのだ。
今では、出し入れ自由で呼吸のようにこなせるようになっている。
「(そこに打たれたくないんだね・・・)」
銃口を向けて発砲。
タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタン
三十二発/一弾倉分をフルオートで放った。
使用弾頭はホローポイント。
メタルジャケットが無いため変形しやすく最も跳弾しにくい。
そして、この弾頭も対人や訓練で使うような弾頭ではない。
れっきとした狩猟用の弾頭だ。
「(追撃ちをされたくない?
まだ戦う気なの?)」
茶葵は追撃ちをする為に素早くリロードをすませる。
彼は倒れていた。
全ての弾をやり過ごす為に。
「(一発弾いてみたけどこれはホローか!
最悪だな、まあこれがあいつの能力だから文句は言えないが厳しいなっと!)」
ドン
再び舞い上がる塵。
蠢く影が停止した。
「正ちゃんの場所は大体分かるんだよ♪」
フルオートで打ち込んだ。
タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタン
「はずれだ。」
「あれ??」
自分の体を見た。
五発程被弾しているようだ。
「もしかして・・・」
「銃弾無効だよ。」
「考えが甘かったか〜〜」
「いや、正解だ。
俺は十発ぐらい受けてる。
俺の負けだ。」
彼は崩れ落ちた。
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二人とも傷も浅く、大事に至ることは無かった。
いま、二人は一緒にシャワー室に入っている。
「やめろ!!
それ以上切るな!」
「コラ〜〜逃げるナ〜〜!!
言う事聞くんだろ!!
大人しくしとけ。」
「誰がここまで切れと言ったぁぁぁぁぁぁ!!!」
彼は涙目で訴えた。
「ご、ごめん。」
さすがの茶葵も思わず謝った。
「手前なんてこうしてやる!!!」
彼はシャワーで水を掛けた。
「きゃっ」
とっさの事で悲鳴が漏れた。
彼は勝ち誇ったような目で見た。
「意外と女らしいな。
悲鳴とか、体とか。」
水でシャツが透けていた。
ブラを着けていないのではっきりと形が浮き上がっている。
「み、み、見たな〜〜〜〜〜!!!!」
顔を真っ赤にして殴りかかった。
「や、やめろ!!
鋏もって殴りかかるな!!」
盛大な痴話げんかは夜まで続いた。
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